資産価値を落とすな!太陽光発電所のセカンダリーマーケット事情

3月に入り、暦では春を迎えました。夜はまだ冷えますが、だんだんと日中は暖かくなってきましたね。上着を脱ぎ捨て、閑散期に蓄えたお腹のお肉も一緒に脱ぎ捨てたい!と切実に願う、わたくし秋元です。

さて今回は、太陽光発電所のセカンダリーマーケット事情について考えていきたいと思います。

セカンダリーマーケットという言葉はよく耳にしますが、実はよく知らない方も多いのではないでしょう?かく言う私もその一人でありました(^_^;) 今回のブログで間違った知識を発信しないように、私なりに調べてみました。

 

セカンダリーマーケットとは

「投資家によって購入された証券を、さらに投資家同士で取引される流通市場」を指しますが、太陽光発電事業においては、中古の太陽光発電施設を売買する市場を指すのが一般的だそうです。

ほうほう。これくらいの説明であれば、私でも簡単に理解ができました(笑) それでは次にマーケットとして成立するほどたくさんの太陽光発電所が新設された背景と、太陽光発電所が売りに出されるまでの流れを追ってみようと思います。

 

太陽光発電所が新設された背景

事業用太陽光発電は、2012年7月にスタートした太陽光発電の売買に関わる法律である固定価格買取制度(FIT法)を追い風に、爆発的に流行しました。これは一定期間(20年間)決まった価格で買い取ることを約束してくれた制度ですが、日本の資本主義経済において、20年間同じ価格ということは基本的に無理があったと言われています。それなのに、なぜこのような法律が生まれたのでしょうか?

ご存知の方も多いと思いますが、背景には今から10年前、2011年3月11日に発生したあの東日本大震災がありました。福島第一原子力発電所で発生した事故により、日本の電力供給は混乱しました。この事故は原子力発電のリスク(放射能の危険性)を十分すぎるほど日本国中に知らしめることとなり、甚大な被害を残しました。そこで政府は社会・環境への影響が少なく、安全な「自然エネルギー」へシフトすることを進めました。その一つが太陽光発電です。(自然エネルギーには水力・風力・地熱なども含まれますが、今回は太陽光に限らせていただきますm(__)m)

当時まだ太陽光発電事業は、コストがかかるし採算が合わないと言われ、それほど普及していませんでしたが、安全で持続可能な自然エネルギー源をどうしても増やしたかった政府は、FITを生み出したのです。

固定価格で売電を保証してくれるなら、安定的な利益が期待できます。それを見逃さなかった資金力のある企業や投資家にとって『これほど魅力的な制度はない!これほどおいしい投資案件は見当たらない!』と話題になり、産業用太陽光発電所の建設ラッシュがはじまりました。FIT誕生の2012年以降、太陽光発電が急速に増加した太陽光バブル時代の到来です。

 

なぜ太陽光発電所は売られるのか?

では、なぜメリットの高い太陽光発電所が売りに出されるのでしょうか?
単純に考えたら、何かしら問題があるから手放したくなったのでは?と疑問視する方も多いのではないでしょうか。私もそう思いました(笑)

確かに売電実績が想定以上に悪く、これ以上運用していくと赤字になる可能性があるとして売却されることもあるそうですが、それはごく僅かだそうです。そこで、セカンダリーマーケットに出てくる太陽光発電所はどのような理由があって売りに出されるのか弊社で調査してみたところ下記3つの理由がありました。

① 発電所の管理が難しくなった
太陽光発電事業を始めたものの、清掃や雑草の除去などのメンテナンスを負担に感じた。会社の移転や自身の引越しで発電施設から遠くなってしまった。

② 原価償却を終え、所有を継続するメリットが少なくなった
太陽光発電への投資が、減価償却費を計上することによる節税を目的としたものだったので、当初の目的を達成してしまった。

③ 他の投資・費用に使いたい
太陽光発電事業よりもっと効率の良い投資先を見つけたので、太陽光発電所を売って得られたお金を使いたい。本業の維持、新規事業に費やす現金が必要になった。

等々、お付き合いのある不動産会社さんへヒアリングをさせていただきましたが、意外にもマイナスな理由による売却は少ないと感じました。 新規開発が行われるほど、処分や売却を行う市場が増えるのは当然のことです。こうして、たくさんの太陽光発電所が市場に出回るようになり、太陽光における【セカンダリーマーケット】の幕開けとなりました。

余談ですが、SAPの親会社である株式会社更紗も、このセカンダリーマーケットの波に乗り、2017年に茨城県にある太陽光発電所を購入いたしました。同年にFIT法が改正されメンテナンスが義務化されたこともあり、自社でパネルの清掃や敷地内の除草を始めたことでメンテナンスの大切さと大変さを実感し、そこで培ったノウハウを同じ悩みを抱える発電事業者様の為に活かしたい!という熱意でSAPが誕生しました。

 

中古の太陽光発電所が人気な理由

次に中古の太陽光発電所が人気な理由を調べてみました。
やはり一番多いのは「実績があるから安心して購入できる」という声でした。新規の場合と違い、過去何年間かの確かな発電実績データがあります。事業計画が立てやすく、利回り計算もしやすいことがポイントです。また、今は12円まで下がってしまったFIT価格ですが、中古の発電所ですと当初の売電価格をそのまま引き継ぐことが出来ますので、40円の物件を手に入れることも夢ではないかもしれませんね(^^)  ただ、最長20年間の固定期間は短くなってしまいますのでご注意ください。稼働済みの発電所であれば、必要な手続きさえ済ませば、すぐに売電収入を得ることが可能なことも大きなメリットのようです。

 

中古の太陽光発電所を購入する際の注意点

次に、中古の太陽光発電所を購入するときに注意してほしい点です。
今までのデータを確認すれば、ある程度の日照時間・発電量が確認できますが、実際に現地まで足を運んで、自分の五感で確認してみることがとても重要です。その時に周辺環境、自然環境もしっかり確認しましょう。郊外にある野立てタイプの太陽光発電システムが多いと思われますので、特に人目につきにくい場所に設置してある場合は、いたずらや盗難にも気をつけないといけません。

太陽光パネルや銅製の送電ケーブルを盗んで横流し(販売)する事件も多発しています。発電所周りのフェンス・防犯カメラの有無、盗難保険や補償内容はどうなっているかも確認しましょう。発電異常を知らせてくれる高性能な遠隔管理システムもついていれば、安全で良い物件と呼べるでしょう♪

あとは地域によって自然災害も心配ですね。地震・台風などにより、発電所が崩壊・故障してしまった時、その間の売電想定分を補償してくれる保険もありますので、そういった保険に加入しておけばリスクも軽減されますね!

ちなみにうちの発電所では、年に2回ほど、たぬきかイタチにケーブルをかじられます(笑)保険に入っているので想定外の出費は免れましたが、こんな予想外のトラブルにも保険は役に立ちますね(^^)

まとめ

中古の太陽光発電所が、今までどのように管理されていたかのエビデンスはとても重要になります。土地付き太陽光発電所はメンテナンスフリーではありません! 除草・パネル洗浄・パワコンの点検などを定期的に行っていないと、思わぬトラブルは増え続けます。

今回ご協力いただいた買取専門業者さん、不動産会社さんからも「どれだけしっかりメンテナンスを行ってきたか記録を残しておくこと」が査定の時から大きく関係してくるとお伺いすることができました。中には、購入したもののこういった発電設備不良が原因で売りに出されている物件もあるらしいので…中古の太陽光発電所を購入する際には、出来る限りたくさんの情報を収集して、信頼できる仲介業者を選びましょう!

東日本大震災から10年も経ちましたが、原子力発電所の収束の目途もたたない中で、今も支援を必要としている人が大勢いらっしゃいます。被害に遭われた方々が心から笑いあえる日が訪れることを心よりお祈り申し上げます。