近年は勢力の強い台風が多く、毎年のように日本各地で被害が発生しています。その中で甚大な被害を受けた太陽光発電所や太陽光パネルも少なくありません。この記事では、経済産業省の資料をもとに、過去の実際の事故事例や対策についてご紹介します。万が一被害に遭ってしまった時の対応や利用できる保険についても解説していきますので、台風対策を考えている人はぜひ参考にしてみてください。
太陽光パネルや設備の台風事故事例
近年は大型台風や集中豪雨といった想定外の規模の自然災害が増えており、太陽光パネル(ソーラーパネル)や太陽光発電設備への大きな被害が報告されています。ここでは、実際にどのような被害が発生したのかご紹介していきたいと思います。
■パネルが飛ばされる
台風と聞いて真っ先に心配になるのは強風ではないでしょうか。2019年の台風19号では、新潟県新潟市でパネルが架台から脱落するという被害が発生しました。また2022年の台風14号・15号でも、九州で強風破損の被害が多く報告されています(※1)。
■パネルが割れる
(参考)今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴についての13ページ目「平成30年台⾵21号に伴う事故例 その2」
⼤阪府⼤阪市此花区にある野立て太陽光発電設備は、2018年の台風21号で大きな被害を受けました。強風による圧力や飛散した砂利がパネルに衝突したことが原因で、36,480枚の太陽光パネルのうち13,413枚が破損したのです(※2)。
■架台の損傷
野立て太陽光発電の場合は、架台の損傷も考慮しなければいけません。地滑りが発生すると基礎ごと歪んでしまうこともあります。2019年の台風15号・19号では、強風・浸水・土砂崩れを要因とする太陽光発電設備の架台等の破損事故が発生しています(※3)。
■水没
浸水被害は、2019年の台風19号では16件、2022年の台風14号・15号では九州・山口県・静岡県で計10件が報告されています。こちらはいずれも豪雨による河川氾濫が原因となっています。太陽光発電設備は水没時に近づくと感電する危険性があり注意が必要です(※1)。
■土砂崩れ
(参考)今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴についての7ページ目「平成30年7⽉豪⾬に伴う事故例」
こちらは台風ではなく集中豪雨が原因ですが、台風でも発生し得るケースなのでご紹介しておきます。2018年7月の集中豪雨により、兵庫県姫路市の発電所構内で土砂崩れが発生しました。太陽光パネルの破損枚数は、全体の約1/3に当たる1,344枚、さらにパワコンも70台中60台が破損しました。強度など施工に問題はなかったのですが、想定外の雨量だったため土砂崩れが発生してしまったと推定されています。ちなみに想定外の雨量とはどれくらいだったのかというと、数日前から長時間の降雨が続いており、崩落時の2日間の雨量は姫路市の7月の平均降水量を超えていたとのことです(※2)。
<参考資料>
※1:経済産業省「令和元年台風19号における太陽電池発電設備の被害状況一覧」
※1:経済産業省「令和4年台風第14号・15号の振り返り」
※2:経済産業省「今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について」
※3:経済産業省「令和元年台風第15号・第19号を踏まえた電力分野の対応について」
太陽光パネルの強度
ここまで台風の被害のお話をしてきたので、太陽光パネルってもしかして壊れやすいの?と不安にさせてしまっていたら申し訳ありません。しかし、太陽光パネルの強度はJIS(日本産業規格)でしっかりと規定されています。こちらは2020年2月20日には新しい規格が制定されました(※4)。適切な設置がおこなわれていれば、通常規模の台風は耐えることができるレベルに設計されているのです。
さらにJIS C 8955では、太陽電池アレイ(ざっくり言うと、太陽光パネルが複数集まったもの)の支持物の強度について定めています。風圧荷重の計算で使用する基準風速は、過去の風害が考慮されるため地域によって異なります。他にも積雪荷重や地震荷重の計算方法も明記されています。2017年には風圧荷重などについて改正がおこなわれるなど、規定は実状に合わせてブラッシュアップされているのです(※5)。JIS C 8956では、住宅用太陽電池アレイ(屋根置き型)の設計及び施工方法について規定されています。内容を詳しく知りたい方は、日本産業標準調査会(JISC)のデータベース検索から閲覧することができます。
<参考資料>
※4:経済産業省「多様化する太陽電池モジュールの評価に関する JIS の整備について」(国立国会図書館「インターネット資料収集保存事業(Web Archiving Project)」ホームページに遷移)
※5:経済産業省「JIS C 8955(太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法)の改定内容」
太陽光パネルが台風で飛んだ時の対応
対策をした上で、万が一太陽光パネルが台風で飛んでしまった時の対応も確認しておきましょう。適切な対応をすることで、被害を広めないようにすることが大切です。なお、10kW以上の太陽光発電設備で事故が発生した場合は、管轄の産業保安監督部への報告義務があります。これは電気事業法第106条の規定に基づく、電気関係報告規則に記されています。
「あれ?報告義務は50kW以上の太陽光発電設備だけじゃなかったの?」と思った方もいるかもしれませんね。実は、2021年4月1日に電気関係報告規則が改正され、報告義務に10kW以上の太陽光発電設備も
対象に含まれることになったのです。報告義務が必要な事故の内容は、経済産業省のサイト内にある事故報告制度についてのページにて確認することができます。
■被害状況を目視で確認する
台風が去り、安全を確保できるようになってから被害状況を目視で確認します。発電量モニターで稼働状況をチェックし、太陽光パネルにどのような損傷があるのかを目視で確認しましょう。さらに被害確認のために現地に行った際、被害状況を写真に収めておくことも重要です。保険金を請求したり、(被害内容によっては)管轄する産業保安監督部への事故報告をしたりする時に必要になるからです。撮影が難しい場合は担当窓口に相談するなど、無理はしないようにしてくださいね。
■電源がオフにできるかどうかの確認
太陽光パネルが損傷すると配線ケーブルが断線している可能性があります。一部が故障していても発電し続けていることもあるので、可能であれば電源をオフにしておくことが好ましいです。電源を落とす場合はプロ(販売店やメンテナンス業者など)を呼んで対応してもらいましょう。
■パネルの回収依頼
自分でおこなうのは怪我や感電の危険性があるため、業者に回収してもらいます。
■パネルの廃棄方法
太陽光パネルは一般ごみのような方法では廃棄できません。適切な処分をおこなう必要があるため、専門の廃棄業者に依頼しましょう。
被害を最小限にするための台風対策とは
■施工や設計に不備がないか確認しておく
台風で故障してしまう原因として、そもそも基準値に満たない設計や施工だったというケースが時々あるようです。施工業者に設計図面を見せてもらうなど、不備がないかどうか確認しておくと安心です。また、太陽光パネルの破損防止として、砂利が飛散しないように通路はアスファルト舗装にしたり粉塵飛散防止剤を散布したりするのもよいでしょう。
■定期的な点検をおこなう
日常的に定期点検をおこなうことも大切です。小さな不備を取り除くことが、大きな事故の発生を防ぐことに繋がります。定期点検については、別記事「【初めてでも分かる】事業用太陽光発電のメンテナンス費用は?住宅用も解説!」で解説しています。
■地域の災害リスクを知っておく
ハザードマップで水害や地盤沈下が起こりやすいかどうかを確認しましょう。どのような災害が起こり得るのか知っておくことで、事前対策や二次被害を最小限にとどめることも可能です。ハザードマップは、各自治体の公式サイトなどで閲覧することができます。
■設備規模に合った保険に加入する
台風被害に遭った際、ただでさえ処理に追われて疲労困憊…なのに金銭面の負担も考えないといけないのはしんどいですよね。設備に合った保険に入っておくことで、金銭面の負担を軽減することができます。詳しくは次項で解説します。
台風被害に遭った場合に使える保険
利用するつもりだった保険が補償外だった…!ということがないように、加入している保険が台風の損害を補償してくれるのか今一度確認しておきましょう。
■どんな保険が使える?
まずはメーカー保証ですが、台風といった自然災害の故障の場合、補償対象外となることがほとんどです。ただ、設置業者が保険会社と契約し自然災害の補償に備えているケースがあるそうです。
住宅用太陽光設備かつ屋根に設置しているタイプの太陽光パネルであれば、基本的に住宅用火災保険または住宅総合保険による補償を受けることができます。ただし、保険加入後に太陽光パネルを設置していたり、架台設置型の住宅用太陽光パネルだったりする場合は、補償外となる可能性があります。適切な保険に加入しているか不安な人は、一度保険会社に相談するとよいでしょう。
事業用太陽光設備の場合は、会社で加入している火災保険(企業総合保険や企業総合補償保険など)や動産総合保険が適用されます。ただし、太陽光発電設備の規模によっては補償が不十分な可能性もあります。こちらも適切な保険に加入しているか不安な場合は、保険会社に相談することをおすすめします。また、発電がストップした期間の売電収入を補償してくれる休業損害補償保険も加入しておくとより安心です。
■他人に損害を与えた場合は?
他人や他人の財物に損害を与えた場合に備える保険として「賠償責任保険」や火災保険に付与されている「個人賠償責任特約」がありますが、自然災害が原因の場合は補償対象外となることも多いようです。保険会社によっても条件が変わってくると思いますので、いざという時のために確認しておきましょう。
まとめ
太陽光パネルは、通常レベルの災害に対しては耐えられるように設計されており、さらに強度の規定についても過去の被害状況と照らし合わせ変更されてきています。しかし、想定外の大型台風が来た場合は被害に遭うかもしれないと考え、有事の際にはすぐに行動できるようにしておきましょう。何も起きないことに越したことはありませんが、万が一被害が発生した時は、適切な行動を取り二次災害を起こさないことが大切です。
そして台風のあとは、強風で舞った土埃やゴミを落とすためにパネル洗浄しましょう!事業用太陽光パネルの洗浄業者をお探しなら(大変申し訳ありませんが、個人住宅の屋根型太陽光設備ついては対応しておりません…!)、当社【株式会社SAP(ソーラー・アセット・プロテクト)】にご連絡ください。
電話でのお問い合わせ:04-7193-8283
WEBからのお問い合わせ:https://sap-solar.jp/contact/index.html
以上、最後までお読みいただきありがとうございました!