ペロブスカイト太陽電池に注目が集まっています。
ペロブスカイト太陽電池は室内の蛍光灯でも発電できる次世代型太陽電池のことで、太陽光パネルの洗浄を生業とするSAPとしては「将来的に仕事がなくなってしまうのでは?」と気になって調べてみました。
この記事を読めば、そんなペロブスカイト太陽電池について簡単に理解することができますので是非最後まで読んでみてください
ペロブスカイト太陽電池とは?
太陽電池を原料で分類するとシリコン系・化合物系・有機系の3つに分類されます。
ペロブスカイト太陽電池はこの中の有機系に分類されます。一般的に流通している太陽光パネルの厚さと比べると100分の1以下と非常に薄く、とても軽いという特徴があります。
従来の太陽光パネルは「セル」と呼ばれる薄い板のような太陽電池が割れないように厚い強化ガラスで覆われていますが、ペロブスカイト太陽電池は「ペロブスカイト」と呼ばれる物質を塗った薄いフィルムのようなものなので、割れる心配がない上に折り曲げることも可能なのです。
ペロブスカイト太陽電池には他にも優れたところがたくさんありますが、まずは既存の太陽光パネルについて整理しておきましょう。
① シリコン系太陽電池
日本に流通している太陽電池の9割以上を占めるのがシリコン系太陽電池です。シリコン系太陽電池の原料は、シリコンというケイ素です。
ケイ素はシリカとも呼ばれ、地球上で2番目に多い元素です。
砂や岩石に含まれ、とても身近な物質にもかかわらず太陽電池の原材料としては不足しています。
その理由は太陽電池に使用するシリコンは99.999パーセント以上の純度が求められるという点にあります。
不純物を取り除き高純度のシリコンを取り出すのに手間も時間もかかるため需要に生産が追いついていないのです。
② 化合物系太陽電池
化合物系で最も普及しているCIS太陽電池は、銅【Cu】インジウム【In】セレン【Se】が主原料として使用されているため、その頭文字をとってCIS太陽電池と呼ばれています。
レアメタル(希少金属)を使用しているため、海外からの輸入に頼ることになり原材料価格、仕入れが安定しません。2000年代前半まで日本は太陽電池製造の世界トップクラスを誇っていましたが、ご存知の通り今や次々と撤退。
その背景には日本の原材料不足も深く関係しています。
また、太陽光パネルの中でも黒っぽいパネルは化合物系のパネルであることが多く、パネル洗浄業者泣かせのパネルでもあります。
化合物系のパネル自体が汚れに強いという特徴があるため、洗浄してもシリコン系のパネルほど発電量が回復しないという点に加えて、その黒さ故に洗浄した跡のわずかな汚れ残りが際立ってしまうのです。
③ ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池にレアメタルは必要ありません。しかも日本はペロブスカイトの主な原料となるヨウ素の生産がチリに次いで世界第2位なのです。
ヨウ素の世界生産量の30%近くを占める日本ですが、そのほとんどが千葉県から生産されていたことに千葉県在住の私も全く知らなかったので驚きました。資源小国の日本にとって主要資源が国内で手に入ることはとても重要です。
そして、このペロブスカイト太陽電池を開発したのは桐蔭横浜大学の宮坂力教授、日本人なのです!
宮坂教授は有機系太陽電池の研究に携わり、ノーベル化学賞の候補にもなっている日本エネルギー界の救世主です。
つまりペロブスカイト太陽電池は資源も技術も純国産として製造が可能な太陽電池なのです。
良いことだらけのペロブスカイトにも欠点はあります。
現時点でのペロブスカイト太陽電池は結晶構造が不安定で、温度や湿度の影響を受けやすく発電が安定しません。塗布による製造で潜在的には低コスト化が可能ですが、現時点でこれらの課題を解決しようとすると反対にコストが掛かりすぎてしまうのです。
また、少量ではありますが【鉛】が使用されています。
ペロブスカイト太陽電池がシリコン系パネルと変わらない高い変換効率を実現できているのは成分の中に鉛を含んでいる点が大きく影響しています。
環境汚染にもつながる鉛の代わりに錫などを使った鉛フリーのペロブスカイト太陽電池の開発が進められています。
ペロブスカイトが注目される理由
先述したメリットを活かしビルの壁面や住宅の窓に設置されたペロブスカイト太陽電池による発電が可能になれば、わざわざ森林を伐採して大規模な太陽光発電所を新設する必要はありません。
国内での調達、製造が低コストで実現できる可能性に加えて、環境への負荷も減らすことができるのであれば政府も力を入れるのは当然です。
政府はペロブスカイト太陽電池を2030年までに普及させるべく量産技術の開発、生産体制の整備等を後押しする方針を打ち出し、経済産業省からはペロブスカイト太陽電池を使用した発電についてFIT価格が通常の太陽光電設備に比べて優遇される電力買取価格10円以上とする見通しも発表されています。
実証実験の紹介
2024年現在までに、様々なペロブスカイト太陽電池の実証実験が行われている例をご紹介します。
既存の建物外壁へのペロブスカイト太陽電池モジュールの設置方法は入射角が有利なため平置きが可能で設置容量が増えることが期待されています。
また、室内などの低照度でも発電が可能出るため駅構内通路などでも実験が行われています。
実験の測定内容としては外壁に設置したときの発電効率の測定、塩害地域での耐久性の確認、発電した再生可能エネルギーの建物内利用の実用性の確認などを行っています。
窓ガラスに直接塗布したガラス建材一体型のペロブスカイト太陽電池はガラスの大きさや日射透過率の調整が可能。
デザイン上の問題で太陽電池を採用するのが難しかったがビルだけでなく、住宅の窓や壁面などにも建物のデザインを損なうことなく活用することができる。
耐久性と発電効率の持続性、5年以内の量産化を目指すことが課題となっています。
小型の庭園灯にペロブスカイト太陽電池を搭載して、発電量、耐久性を検証しています。
発電した電力を、湿度、温度、照度、二酸化炭素濃度を測定する気象センサーの通信用に使うほか、支柱内に搭載した蓄電池に日中に蓄積させた電気を貯めて、夜にLEDを点灯させます。
フローティングソーラー、水上ソーラーなどと呼ばれており、水に浮く架台を使ってため池などの水上に設置しています。
日本は国土面積が小さく太陽電池を設置する土地を確保することが難しいという問題がありますが、ため池などの水上に設置することで解決し、水上に設置することによりパネル温度の上昇を抑える効果があります。
従来だとパネルが水に沈まないようにフロート架台(浮き具のようなもの)と係留具でため池の底に沈めて繋ぎ止めていました。
しかし、施工方法が特殊なため、施工できる業者が少ないという問題がありました。ペロブスカイト太陽電池の軽量性と浮体性能、施工性や発電効率などを検証しています。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池を量産できれば、今まで設置できなかったビルの壁面や建物の屋上、そして曲面的な建造物にも大量に設置できるようになるかもしれません。
政府でもまずは駅・役所などの公共施設で活用を進め、将来的にはさらに広い範囲での活用を視野に入れているようです。実現できれば2050年のカーボンニュートラルに向けて大きな一手となることは間違いありません。
ただ、海外に目を向けるとイギリスでは2020年にはすでに変換効率の当時の世界記録を達成、2022年には住宅用のペロブスカイト太陽電池の販売をすでに開始しています。
ポーランドでは2021年にIoT機器向けのペロブスカイト太陽電池の生産を先行してスタートしており、さらに中国では1辺当たり50cmのモジュールで発電効率をより向上させ生産を進めています。
日本では商品化するまでのハードルが高く、早い段階でトライアンドエラーを繰り返すことができないため、諸外国の後塵を拝すことになりかねません。政府には柔軟な対応を願うばかりです。
ちなみに、ペロブスカイト太陽電池を洗浄できるのか調べたところ、現時点でのペロブスカイト太陽電池は湿度に弱いので水は使わず、乾いた布やエアダスターなどで表面のほこりや汚れを除去することが望ましいようです。
太陽光パネルの洗浄を専門とするSAPは洗浄する水にこだわり、夏の現場で雨が降れば恵みの雨だと歓喜し、遠方の現場では水を貸してくれる場所探しに翻弄されている私どもですが、太陽光パネルの進化とともに洗浄方法も変わっていくのかもしれません。
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