「なぜ?」電力不足なのに出力制御の矛盾

夏の酷暑を乗り越えて、ようやく涼しくなってきた今日この頃。意気揚々と太陽光発電所の草刈りをしようと車から出たとたんアブに刺されたわたくし秋元です!

ウシアブと呼ばれる大きなアブは二酸化炭素と熱を感知して車を動物などの獲物と勘違いするそうで、車に群がっていた1匹にチクリとやられてしまいました。

今回はアブに刺される以上に痛いかもしれない太陽光発電の「出力制御」についてブログをまとめてみましたので5分ほどお付き合いください。

 

出力制御のお願い

2021年4月1日、再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施工規則が一部改正されました。簡単に言うと出力制御についてです。

この出力制御について、弊社にも東京電力から「お願い」という名の通知が届きました。お願いの内容は、太陽光発電所のパワーコンディショナー(PCSまたはパワコンと呼ばれる電力変換装置。以下パワコン)を出力制御機能付きのパワコンに付け替えて下さいとのことでした。

しっかり期限まで設けられており2023年の3月31日までに手続きを開始して、2024年の3月31日までに設置工事を完了させなければいけないとのことです。

冗談じゃありません!

パワコンが壊れたわけでもないのに、付けたくもない出力制御機能付きのパワコンを自費で購入させられ、発電まで制御されるので売電収入が減らされるというのです!

アブに刺された以上のショックに落ち込んでいましたが、パワコンの設置業者さんに確認したところ、弊社がもともと設置していたパワコンは出力制御装置を後付けできるタイプだったので、パワコンを丸ごと買い替えることだけは避けられそうです…

つい最近まで「電力が足りない!」「太陽光発電所(再生可能エネルギー)もまだ足りない!!」と言われていたのに、どうして出力制御しなければならないのでしょうか?

 

出力制御の背景

ことのはじまりは、2018年9月6日にさかのぼります。

この日、北海道で最大震度7を観測した「北海道胆振東部地震」が起こりました。真夜中の3時7分に発生したこの地震の約17分後に、北海道全域におよぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生したのです。

ブラックアウトとは大手電力会社(この地震の場合は北海道電力)の管轄する地域のほぼ全てで停電が起こる現象のことです。ここまでの大規模な停電が発生したのは日本で初めてのことだったのでTVや新聞でも広く報じられました。記憶に残っている方も多いのではないでしょうか?

実は、この北海道の大停電を引き起こした原因が太陽光発電の出力制御と大きく関係しています。大停電の原因は地震の衝撃で北海道の至る所で電線が切れてしまったことではなく、電気の周波数が乱れたことが原因だったのです!

電気は「電気を使う量(需要)」と「電気を作る量(供給)」が常に一定のバランスを保っていないと電気の周波数が乱れて正常に電気を送ることができなくなってしまうのです。また、その周波数の乱れによって発電所の安全装置が作動して発電を止めてしまうので、大停電が起きるのです。この一定のバランスを保たなければならないことを電気の【同時同量の原則】と呼びます。

電力会社さんが24時間365日、電気の需要にあわせて供給量を調整し、絶妙なバランスを保っているからこそ毎日安心して電気が使えるんですね。

 

出力制御の順番

関連性はわかりませんが、この地震直後の2018年10月に九州電力管内において、全国で初めて太陽光発電の「出力制御」が実施されました。

九州地方は晴れの日が多く、自治体も再生可能エネルギーへの取り組みが積極的なことから、太陽光発電の割合が全国で最も高いエリアになっています。それに加えて4基の原子力発電所も稼働しているので電力の供給にかなりの余裕があります。

特に春や秋の過ごしやすい季節はエアコンをあまり使わなくなり、休日ともなると工場の稼働もストップすることから2018年度では26回も出力制御が実施されました。

この出力制御は安定した電力供給を行うだけでなく、再生可能エネルギーを拡大させることも目的の一つとしています。

「ん?太陽光発電が多すぎるから制御するんじゃないの?」と不思議に思いますよね!?

実は、出力制御されてしまうのは太陽光発電だけではありません!加えて太陽光発電が制御されるまでには大きく分けて①〜③の段階を踏むことになります。

出力制御は火力発電を筆頭に、他の発電方法にも適応されます。この順番はどの発電方法から出力制御を行っていくのかを定めた『優先給電ルール』と呼ばれます。

CO2の排出量が多く、出力の調整がしやすい火力発電から順番に制御され、太陽光は4番目に出力制御される対象となっています。環境にやさしい再生可能エネルギーは出力制限の順番が後回しにされるので結果的に再生可能エネルギーの拡大につながっていくということなんですね。

「じゃあ早く火力発電所を減らしちゃえばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、お天気に左右される自然電力と違って出力調整が比較的容易で安定した発電量を確保できる火力発電所は突発的に電力が不足した時などに大活躍してくれるので、すぐに無くすわけにもいきません。なんでもバランスが大切ということですね。

 

まとめ

『電気の供給と需要のバランス』がどれだけ重要か、ご理解いただけましたでしょうか!?

太陽光発電は、太陽が出ていれば電力の需要が少ない時間帯でもストップすることなく電気を作り続けてしまうので、需要と供給のバランスを取る為にはどうしても出力を抑制する必要があるのですね…

なんだか損した気分になってしまいますが、今回のブログで書かせていただいた出力制御や、前のブログでご紹介した「廃棄費用積立制度」によって売電収入が下がることから太陽光発電所自体の価値も下がることが予想され、今が売り時だとして太陽光発電所を手放す発電事業者さんも現れているようです。

それでも2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの筆頭である太陽光発電に寄せられる期待は大きいと思いますので、岸田内閣には電気代の値下げだけではなく、太陽光発電事業者にも優しいバランスの取れた施策をお願いしたいですね。

太陽光発電所の価値を下げないように、太陽光パネルを洗浄して発電効率をアップさせたい読者様はSAPまでお気軽にご相談ください!

お問い合わせはこちら