太陽光発電所 銅線ケーブル盗難被害とその対策

太陽光発電所における銅線ケーブルの盗難被害が後を絶ちません。ケーブルが盗難されると発電が止まり発電停止期間中の損害と復旧のためのコストがかかります。「保険に入っているから大丈夫!」と思っていませんか?最近では銅線ケーブルの盗難を補償の対象外にする保険会社も出てきています。そこで今回は太陽光発電所の銅線ケーブル盗難についての最新情報と盗難被害をできるだけ回避するための対策について学んでいきましょう!

 

こんなに多い!盗難による影響

「ケーブルを盗られても保険で対応できる!」
「ケーブルを新しくすれば問題ない!」と思っていませんか?
銅線ケーブルの盗難は様々なところに影響が出てしまいます。

 

銅線ケーブルの盗難にあった場合、そのケーブルで接続されているエリアの発電は停止した状態となり、復旧作業を終えるまで停止した状態が続きます。そのため、復旧されるまでの間は発電機会を損失することになり、大幅に収益を低下させることになってしまいます。最近では銅線の入手も困難になってきており復旧が長期化するため、深刻な被害を招いてしまいます。

 

ケーブルを盗む窃盗団は主に発電していない夜に犯行に及びます。発電していないからケーブルを切っても感電しないからです。ですが、ケーブルが切断された状態でも太陽光パネルは太陽の光が当たると発電します。そうすると切断された箇所から草木などに引火して火災事故に繋がることもあります。

 

改正FIT法によって野立てタイプの太陽光発電設備はフェンスの設置が義務化されているため、どの太陽光発電所もフェンスを設置していると思いますが、窃盗犯は発電施設に侵入するために門扉の鍵を破壊するか、フェンス自体を切断して侵入します。破損された規模にもよりますが、手痛い出費となってしまいます。

 

損害保険会社各社の太陽光発電の保険料は2022年10月に約20〜30%値上げされました。値上げの背景としては自然災害の増加と銅線ケーブルの盗難です。土砂崩れや洪水、積雪による自然災害の補償に加えて、盗難被害の補償が相次いでいることから保険料の値上げをしなければ採算が合わなくなってしまうため、保険会社も大幅な値上げに踏み切ったようです。銅線ケーブルの盗難にあって一度は保険で対応ができたとしても、次回以降のケーブル盗難に関しては補償の対象外、もしくはさらに高額な保険料を払い続けなければ保証を継続することができなくなります。

 

盗難被害が急増したことによって2023年の7月頃から保険契約の免責金額も引き上げられました。この免責金額とは実際に被害を受けた金額のうちの自分で支払わなければならない自己負担額のことをさします。保険契約の免責金額を40万円と設定したときに盗難にあって100万円の損害が発生したとします。その場合、60万円は保険会社が負担してくれますが、残りの40万円は自己負担になってしまうのです。

予期せぬ損失に予定していた太陽光パネルの清掃作業や発電所内の除草作業などのメンテナンス費用を捻出することができなくなってしまうかもしれません。そうなるとパネルの汚れ、雑草の影による発電量の低下を招き、悪循環に陥ってしまいます。
なぜ?これほど銅線ケーブルの盗難は急増しているのでしょうか?

 

 

増加する盗難の背景

全国の金属盗難事件は2020年に5478件でしたが、2023年は1万6276件と約3倍に増加しています。この数字には公園などの水道の蛇口や用水路の蓋などの金属も含まれていますが、この中でも特に銅の窃盗事件が急増しています。ここまで盗難事件が急増した理由は主に銅の価格が高騰したことだと考えられています。では、なぜ銅の価格が高騰したのでしょうか?

 

地球温暖化を食い止めるために脱炭素に向けた働きが世界中で加速しています。主に再生可能エネルギーや電気自動車などは脱炭素の主力とされて注目されています。その再生可能エネルギーの筆頭である太陽光発電所で使用されている電気を通すケーブルはほとんどが銅製で、メガソーラーと呼ばれる大きな太陽光発電所では銅線ケーブルが数十km分も張り巡らされています。また、急速に普及している電気自動車はガソリン車の約4倍に相当する80kg以上の銅を1台で使用します。脱炭素が進むに連れて銅の需要も増え、世界中で銅の争奪戦が起きるほど需要が増えているのです。

 

2020年頃から新型コロナウイルスの感染者数が拡大し、世界中でロックダウンや緊急事態宣言といった対策がとられ経済活動が停止状態となりました。銅を産出する鉱山、銅を精製する工場、その銅を運ぶ物流もストップしたため、満足に銅を供給することができなかったのです。さらに2022年にはロシアによるウクライナ侵攻がはじまり、ロシアから銅の輸出が制限されるなど国際的な物流が滞ることによって、増え続ける需要に対して供給が追いつかないのです。

このような背景から銅の価格が高騰したために、銅線ケーブルの窃盗事件が多発するようになったと考えられます。また、盗まれた銅線などは転売を目的とし、金属の買取業者に持ち込まれます。もちろん買取業者には金属を買い取る際に身分証や外国人の場合は在留カードなどのコピーを取るなどの対応や規制をもとめる地域もありますが、盗まれた銅線ケーブルは「古物」には該当せず、買い取る業者は古物商許可が無くても銅線ケーブルを買い取れてしまいます。買い手側は規制の多い古物商許可が必要なく、売り手側は身分証を呈示するよう決められているわけではないので盗品でも売れてしまう場合があるのです。
もちろん盗品とわかって買い取ると「盗品等有償譲受け罪」という犯罪に該当し、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処されます。

 

 

銅線盗難対策5選!

太陽光発電の収益を増やすためには太陽光パネルを多く設置する必要があるため、広い敷地を確保しなければなりませんが、土地の購入費用を考えると人里離れた場所になってしまいます。そのような場所では夜間に侵入されても見つかる可能性が低く、窃盗団の格好のターゲットとなってしまいます。24時間体制で太陽光発電所を警備するスタッフを常駐できればベストですが、相当な規模の発電所でもない限りコスト的に難しいでしょう。そこで、SAPがオススメする銅線ケーブルの盗難対策を5つご紹介します!

 

太陽光発電所にフェンスを設置することが義務付けられているため、フェンスは既に設置されていると思います。ですが、工具などで簡単に切断されるようなものや、背が低いフェンスだと簡単に侵入されてしまいます。窃盗団は犯行に及ぶ前に必ず下見を繰り返し、短時間で銅線ケーブルを盗むことができる太陽光発電所を探しています。侵入されそうな箇所のフェンスだけでも背が高く頑丈なフェンスに取り替えたり、有刺鉄線などを巻き付けるといった対策を取ることで「この発電所は盗難に時間がかかる」と思わせることが重要です。

 

防犯カメラを窃盗犯に見える位置に設置することで「見られている」「記録されている」と思わせることが重要です。実際にはカメラを気にせず犯行に及ぶケースもあります。赤外線センサーなどで侵入を察知すると光る照明や大音量で鳴り響くサイレンも有効ですが、現場に駆けつけてくれる警備会社は非常に頼りになります。
銅線ケーブルは短くても重量がありますので、盗難の犯行時間が数時間に及ぶ場合もあります。警備会社との契約を検討する場合は、侵入を感知してから現場に駆けつけるまで時間がどれくらいかかるのか確認してみましょう。

 

太陽光発電施設内や外周のフェンスに雑草が生い茂っていたり、太陽光パネルが汚れていたりすると杜撰な管理や警備体制であると思われ、窃盗犯のターゲットとなってしまいます。特にフェンスに絡まった蔦は一度敷地の中に侵入されてしまうと目隠しとなってしまうので窃盗犯が敷地内で自由に動くことができるようになります。蔦はフェンスを倒壊させる原因にもなるので定期的な除草が必要になります。

 

一度被害にあった太陽光発電所は再度狙われる傾向があります。そのタイミングで銅ではなくアルミのケーブルに変更する発電所も増えています。アルミの買取単価は銅よりも現在(2024年4月)の相場で5分の1程度の単価になるため、窃盗犯にとっても同じリスクを負って得られる金額が5分の1になるのであれば避けるようになるはずです。
海外でも金属の盗難が増えており、マンホールの蓋をファイバーグラス製に、道路標識をプラスチック製に交換するなど金属を使用していた物を別の素材で代用している国も増えています。

 

とにかく盗難に要する時間がかかるように見せることが重要です。ケーブルが埋設されているだけで盗まれるリスクは軽減されますし、どうしてもケーブルが露出してしまうパワコンや接続箱などの周りはフェンスで囲って「この発電所のケーブルを盗むには時間がかかってしまう」と窃盗犯に思わせるようにしましょう。

 

 

まとめ

ちなみにSAPがグループで所有している太陽光発電所も過去に銅線ケーブルの被害にあっていますが、上記のような対策を施したことによって今のところ被害を回避できています。(盗難被害の記事についてはこちら
銅線ケーブルの盗難は年々増加傾向にあり、非常に悩ましい問題です。先にご紹介しましたアルミケーブルは保険会社が推奨するなど再生可能エネルギー業界全体にセキュリティの向上が求められています。民間企業による再生可能エネルギーへの投資はこれからも欠かすことはできませんが、発電施設を守るためのコストが増えてしまうと「再生可能エネルギーはお金がかかる。」「儲からないならやる意味がない。」と敬遠されてしまうかもしれません。脱炭素社会実現に向けた主力である太陽光発電が盗難によって足を引っ張られることがないように国会で盗難の厳罰化について議論を進めていただきたいと切に願うばかりです。

 

 

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