営農型太陽光発電はソーラーシェアリングとも呼ばれ、営農と売電収入(または自家発電)を両立する取り組みのことを指します。ただし、「農地の一時転用許可」を取る必要があるなど、簡単に始められるものではありません。
この記事では、農林水産省から発行されている「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2023年度版)」等を参考に、営農型太陽光発電の概要やメリット、始め方などを簡単にご紹介していきます。太陽光パネル洗浄会社である当社【株式会社SAP(ソーラー・アセット・プロテクト)】ならではの切り口で、パネル設置時に注意しておきたい点も解説!営農型太陽光発電を検討し始めている人や農地の新たな活用方法に興味がある人は、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
営農型太陽光発電とは?
■概要説明
営農型太陽光発電は、一時転用許可を受けた農地の上部空間に太陽光パネルを設置し、営農と売電収入(または自家消費型発電)を両立する取り組みのことを言います。
畑や田んぼに柱を立てて、太陽光パネルの屋根を作り、パネルの下で農作物を育てるのです。農業と発電で太陽光を共有することから、ソーラーシェアリングとも呼ばれています。売電収入や自家消費型発電による経費削減が可能になるため、農業経営をより豊かにする方法として期待されています。
ただし、あくまでメインは「農業」です。年に1回の報告の際、農作物の品質が劣化したり減収したりするなど、営農に大きな影響が出ていると判断された場合は、設備を撤去して農地に復元する必要があります。そして「一時転用」という文字通り、一時転用許可の期間は、条件によって3年以内・または10年以内と決められています。そんなに短い期間だと、投資した費用の元が取れないまま終わってしまうのでは?と心配になりますよね。しかし、そうならないための仕組みがしっかりあるのでご安心ください。
営農型太陽光発電は、「再許可」を得ることで、一時転用を再度認めてもらえる仕組みがあります。つまり、実質的に一時転用期間の延長が可能なのです。もちろん再許可が下りるためには、適切な営農が継続されていることが必須条件ですが、営農型太陽光発電は20年30年といった長期間の運用を計画することもできるのです。
■農業と再生可能エネルギーの組み合わせの重要性
農業と太陽光発電(再生可能エネルギー)の組み合わせである営農型太陽光発電は、SDGsの貢献にも繋がります。農林水産省のサイトによると、営農型太陽光発電の導入はSDGsの17の目標のうち5つの課題解決へ貢献できると言われています。
■現状と課題
農林水産省が発行している「営農型太陽光発電について」によると、太陽光パネルの設置が許可されている農地は、4,349件、広さは1,007.4haだそうです(2021年度までの実績)。1,007.4haは、東京ドーム約215個分に当たります。国はさらに営農型太陽光発電の導入を促すため、さまざまな支援や措置をおこなっています。農林水産省からは「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2023年度版)」も発行されています。
ただし、営農型太陽光発電は簡単に始められるものではありません。まずは、「農地の一時転用許可」を取る必要があります。農地を守るための「農地法」があるため、土地の持ち主であっても「今から営農型太陽光発電をやります!」と勝手に太陽光パネルを設置することは許されていないのです。しかも、一時転用許可を申請したからと言ってすべてが許可されるわけではありません。概要説明の項目でも触れたように、あくまで本業は「農作物の栽培」なので、太陽光パネルを設置することで農作物の収穫に影響が出る恐れがある場合は、営農型太陽光発電設備の設置は認められないのです。
イニシャルコストの問題も太陽光発電設備の導入の大きなネックとなっています。そして電力系統の制約も考慮しなくてはいけません。そう… 営農型太陽光発電の普及には、数々の課題があるのです。営農型太陽光発電を実現するまでの課題ついては、別記事「太陽光発電+農業?話題の営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を知ろう!」で取り上げています。ぜひ、こちらの記事もチェックしてみてください。
営農型太陽光発電のメリット
■土地の有効活用
再生可能エネルギーは、従来の発電方法と比べると発電効率はよくありません。太陽光発電も例に漏れず、いわゆる「エネルギー密度が低い」という課題を抱えています。この課題を解決する方法の1つとして、「太陽光パネルをたくさん設置すること」が挙げられます。しかし、だからと言って太陽光パネルはどこにでも設置できるものではありません。
そこで注目されたのが、農地というわけです。日本の農家人口は年々減少しており、耕作放棄地は増え続けています。ただでさえ自給率が低いと指摘されている日本の現状を考えると、農地が減っていくのは由々しき事態です。設置場所が欲しい太陽光パネルと担い手を求めている農地──この2つの問題を解決し得る手段として、営農型太陽光発電での農地活用に期待が寄せられることとなったのです。
■経済的な収益の向上
農家の後継ぎ不足の原因は一つではありませんが、大きな要因に「農業経営が難しいこと」が挙げられます。農業者自身がどんなに優秀であっても、自然災害で収穫ができなかったり、市場価格が下がったりして収入が減ってしまうことがあるからです。農作物を輸出している場合は、為替変動の影響も受けるでしょう。
太陽光発電で売電収入を得ることができれば、農作物の収入だけに頼らなくて済むようになります。また、自家消費型発電として利用すれば、暖房費等の電気代の削減に繋がるため、収益の向上が見込めるというわけです。実際に、宮城県にあるトマト栽培施設では年間約600万円の電気代が削減できたという実績があります(※1)。
<参考資料>
※1:農林水産省「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2023年度版)|P.3」
営農型太陽光発電の始め方
ここでは、農林水産省が発行している「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2023年度版)」を参考に、営農型太陽光発電の始め方を簡単に解説していきます。営農型太陽光発電には「農業」と「発電」の2種類の手続きが必要です。農業に関する事項では営農計画の策定・農地の一時転用の手続きを、発電に関しては通常の太陽光発電設備と同じ手続きを行うことになります。
■検討~事業開始までの流れ
検討から事業開始までには多くの工程を要します。この記事ではおおよその流れが把握できるように、全体の流れを簡単な表にしました。検討~事業開始に関わってくる人物・機関は、「営農者」「農地転用許可権者」「経済産業省・電力会社」「発電設備の施工業者」となります。農地転用許可権者とは、ざっくり説明すると「農地を農業以外に使っていいですよ~!」と許可を出す立場の人のことです。農地転用許可権者は、農業委員会や都道府県知事・指定市町村の長などのいずれかが該当し、農地の条件によって許可権者は異なります。
■メンテナンスに備えた注意事項~これから設置する方へ~
太陽光パネルは定期的な洗浄が必要です。しかし、営農型太陽光発電で設置される太陽光パネルは、通常の太陽光パネルと同じ方法では洗浄ができません。その主な理由として、
が挙げられます。太陽光パネルの洗浄は手作業でもできますが、PVクリーナーのようなパネル洗浄機械と比べるとどうしても金額は割高になってしまいます。発電効率が上がったとしても元を取るのは難しいため、手作業での洗浄は現実的な方法とは言えないのです。そうなると、太陽光パネルを洗浄すること自体が困難だと言わざるを得ません。
これから営農型太陽光発電の設備導入を考えている方は、メンテナンスのしやすさも考慮して設置することをおすすめしたいです。具体的には、雨の自浄作用で汚れが落ちるようにパネルに傾斜をつけたり、パネル洗浄機械での作業が可能になるようなパネル配置にしたりという方法が考えられます。といっても、ケースバイケースなので、営農型太陽光発電を検討中かつ定期的な洗浄を視野に入れたパネル配置をお考えの方は、太陽光パネル洗浄実績多数の当社【株式会社SAP(ソーラー・アセット・プロテクト)】へご相談ください!
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■国や自治体の支援施策
国の支援施策は、「相談」「実証・研究」「設備導入」「融資」の4つの種類があります(2023年度予算成立時点)。農林水産省や経済産業省が関わっており、それぞれ窓口は異なります。例えば営農計画の策定について相談したい場合は、農林⽔産省⼤⾂官房環境バイオマス政策課の窓口を通して、専門家に相談することができるようです。詳細は、営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2023年度版)のP.39に掲載してある「営農型太陽光発電に係る国の⽀援施策」をご覧ください。
国だけではなく、地方自治体特有の支援施策もあります。支援施策を公表している自治体は、宮城県・神奈川県・新潟県・兵庫県の4県です(2023年3月3日時点)。主に補助金に関する施策で、本記事を執筆の時点(2023年12月1日)では、すでに公募を締め切っているものもあります。来年度に向けて新規受付が開始される可能性もあるので、各自治体に問い合わせてみてもよいでしょう(※2)。
<参考資料>
※2:農林水産省「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2023年度版)|P.15~P.18」
■事例紹介から見る営農型太陽光発電の可能性
営農型太陽光発電の事例は、農林水産省等のサイトで公開されています。作物の種類は、茶・水稲・野菜・果樹など多岐にわたります。これから営農型太陽光発電を検討したい人にとってはぜひチェックしておきたい内容ではないでしょうか。
例えば、太陽光パネル下でブルーベリーを栽培した事例では、パネルによる日陰のおかげで真夏の収穫が楽になったという思わぬ恩恵があったなど、現場ならではの体験が語られています(※3)。別の事例では、営農型太陽光発電を取り入れたことで収入が安定し、収益性の高い水耕設備への投資や障がい者雇用(農福連携)を実現したケースも紹介されています(※4)。営農型太陽光発電の運用成功は、農家自身の利益だけではなく、地域への貢献や新たな働き口となる可能性も秘めているのです。
<参考資料>
※3、※4:農林水産省「営農型太陽光発電 取組事例集(一覧)|P.14、P.12」
まとめ
営農型太陽光発電の概要やメリット、営農型太陽光発電の始め方などを簡単に解説しました。営農型太陽光発電は開始までが大変かもしれませんが、事例紹介を見ているとさまざまな可能性を秘めていて少しワクワクしませんでしたか?もしかしたら、営農型太陽光発電を身近に感じる未来がくるかもしれませんね。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました!
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